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なぜ脱アドビしたいのか。ツールから見るweb開発。
Posted by Miki Ishijima on .Shift10という年末に行われるwebデザイナー向けのイベントで、2016年のツールについてお話する機会がありました。当日語れなかった周辺に関するお話をツラツラと。
イベントに参加していない方も楽しめる内容になっていますが、より深く内容を知りたい方はイベント後でも動画やスライドで詳細を知ることができるフォローアップ参加がおすすめです。
「Shift10:Webデザイン行く年来る年(CSS Nite LP50)」(2016年12月17日開催)
脱アドビしたい理由
アドビ製品はどれも良いですが、主となるPhotoshopやIllustratorをプロジェクトによっては使わないケースがあります。
Adobe XDは、パワポがわりにけっこう立ち上げてます。
1ヶ月で10時間もさわれない場合、月々払っている費用とのバランスが悪いのではないか。無駄な支出は減らしたい。というのが発端です。
え、じゃあ、デザインどうしてんの?
仕事では、グラフィックデザインを請けるより、インターフェイス設計や、デザイン批評、会社で新しく立ち上げるデザインチームのトレーニングというのをメインにするように動いています。
ですので、スタジオで撮影した写真をゴリゴリ合成するというような事がなくなりました。
だから、脱アドビと言えているのでしょうね。
セッションの反省点
Shift10では、アンケートがすぐさま登壇者に公開されます。
「早く切り上げて休憩時間にしようぜ」というくらいのおまけのようなセッションでしたが、アンケートでも言及してくださった方がいて本当に嬉しい…。ぐすっ。
ただ、内容への言及となると数がすごく少なくなるので、もう少し身のある話ができるようになれたらいいな。といつも思います。
ドキュメント読めば分かる話はもういいかな
新進気鋭のころならともかく、わたしもそろそろ30代も中盤に入るようになった今は、「ドキュメント読めば分かる話」とか「無料でもできる!」とか「ソフトA VS ソフトB」みたいな話は他の方におまかせした方がいいかな。と思うようになりました。
使ってみた所感の話とか、展望の話は楽しい
そのかわり、セッション中に話した「AiとSketch」の話とか、まとめで取り上げた「多機能から軽快へ」みたいな話は好きです。
あれは個人的観点によるものですから、私が話す意味というのがあります。
ここからはそういうお話。
ツールはどこからどこまでか
1年の振り返りとして「ツール」をどう紹介するか。というのは毎回悩みますが、一番の悩みはどの分野までをツールとして扱うかです。
グラフィックソフトの利用が減ってきた代わりに、その他のツールの利用はすごく増えました。
- 画面設計用のツール
- Sketch
- Adobe XD
- Princile
- Flint
- Origami
- Figma
- InVision
- Marvel
- コミュニケーション用のツール
- Slack
- appear.in
- コーディング用のツール
- Terminal
- Sublime Text
- Gulp
- Yeoman
- 3D制作ツール
- Blender
- Magica Voxel
- プログラミング学習ツール
- pico-8
正式名称とかは特に意識して書いてません。
webデザイナーと言っても皆さんやっている事が異なってきたので、グラフィック制作ツールだけを「ツール」として扱いづらくなってきました。
こうなってくると、それぞれのテーマにツールを付随させる事もできそうですね。
2017年のツールの展望
セッションでもさっくりとお話しましたが、多機能でワンストップというアプリが依然として強みを発揮している反面、軽快でシンプルなアプリを中心に用途ごとに小粒アプリを連携して使っていくというのもSketchをメインストリームに起こっていた事象だと思います。
エディタでは、Sublime Textなどで似たような事がありましたね。小粒アプリのメリットはランニングコストの低さとスピード感です。
しかし、ST(Sublime Text)2から3に以降してからプラグインの開発数は減っている印象があります。2のまま移行できていないケースもあると考えると、小粒アプリの宿命として常に移住が前提となります。
Sublime Textに限って言えば、設定がOverride式でUserとDefaultがプラグインごとにあったりして非常にややこしいってのも、そろそろ移行したい理由になります。
Sketchに関してもプラグインが豊富なうちは良いですが、開発数が減っていった時に足並みが揃わず、けっきょくワンストップ型のアプリが帰り咲く可能性も十分にあります。
新しいツールを追うのが半ば趣味となっている人たちでなければ、2,3年ほど待ってみて機会があれば使う。程度で良いのではないでしょうか。
ツールの話をするとどうしても「使うか・使わないか」となってしまいますが、UIを見比べつつワインを飲むという楽しみ方もあると思います。
どういう思想で作られたかを考えてみる
また、移行したアプリが移行元のアプリの代替となり得るかの見極めも重要です。
アプリの設計思想などは公式サイトやUIから読み取れることがあります。
そのアプリで操作が面倒なコトは、開発者の怠慢ではなく、メインターゲットとして想定していないと考えてみると面白い発想が産まれるかもしれません。
Sketchのベクター操作がIllustratorと比べてステップ数が多く感じられるのは、そういう事なのだと私は思いました。
2016年話題だったAdobe XDでは、開発者がインタビューに応えており、日本語で設計思想を読むことができます。
デザインを作って,プロトタイピングをし,フィードバックをもらって,そしてそれらを別々のツールで作り直していたら非常に時間がかかる。だから,それらのワークフローを完結できるような全く新しくて,そして速いツールを作りたかった。
世界50万人のデザイナーが注目する現在開発中の「Adobe XD」開発担当者インタビュー,日本語プレビュー版はもうすぐ公開:インタビュー|gihyo.jp … 技術評論社
バックグラウンドを知ることができると、カンプを作るソフトとして活用できるか、なぜWindows版の開発は遅いのかなどが想像しやすくなると思います。PhotoshopやIllustratorと重なる領域の機能実装なども優先順位は低そうと感じたり。
Photoshopが廃止した「アレ」からweb開発の潮流が見えてくる
どのアプリにどこまでを求めるか、そしてこのアプリで実装された機能はweb開発のどの問題をクリアにしてくれるのか。
作業の合間にそういったトコロに思いを巡らせていくと、自ずとこれからのweb開発・制作の方向性が見えてくるかもしれません。
Photoshopが「デザインスペース」を廃止した事はweb開発のあり方を意識せざるを得ない出来事だったように思います。
私はあまり触っていないので、間違いがあったら教えてください。
あくまで憶測ですが、レタッチソフト・グラフィックオーサリングソフトの領域からはみでる開発だったのではないでしょうか。web開発をXDへ任せ、決別したようにも思えます。
多くの人がレタッチソフトという範疇を越えてweb制作から動画編集までと幅広く行っているPhotoshopがこの決断をした事は、今のweb開発のあり方が垣間見えるような気がします。
2016年はそういった意味で「等身大のweb」が浸透した年だったのではないでしょうか。
紙と同じようなフローで開発されることは稀になってきて、マシンリーダビリティやアクセシビリティへの関心も高くなり、どのデバイスでも同じような情報に、さまざまな人がアクセスできる。
やっと「ユビキタス」という言葉が実現できるweb開発が可能になってきた。そういう年だったのだと思います。
2017年は今以上にもっとアクセシビリティの比重が増えていくことでしょう。そういった時に出てくるツールとはいったいどんなものなのか。楽しみにまた、いろんなアプリを使ってみたいと思います。